Chicca Kyodo (キッカ経堂)

プロジェクト概要

プロジェクト名Chicca Kyodo(キッカ経堂)
所在地東京都世田谷区(千歳船橋駅 徒歩7分)
施工年2011年
用途・種別賃貸マンション(全10戸・ワンルーム7戸+メゾネット3戸)
対応内容設計デザイン(コンセプト立案・土地選定から参画・設計・デザイン監修)

オーナー様が抱えていた悩み

「本当に女性に喜ばれるマンション」はどうすればつくれるのか

世の中の大半は、女性が良いと思うものが売れるマーケット構造をしています。賃貸マンションも例外ではありません。女性に受け入れられるマンションは、結果として男性にとっても良い物件になる。オーナー様はそのことに気づき、女性スタッフだけで構成されたドムスデザインに設計を依頼されました。

しかし、当時の賃貸マンション市場には課題がありました。大手デベロッパーが「女性向け」を謳う物件であっても、実態はIHキッチン、浴室乾燥機、収納の多さといったハード面の工夫ばかり。機能スペックの競争に終始し、女性が本当に求めているものに応えられていなかったのです。

「機能では満たせない、女性の感性に訴えるマンションをつくりたい」

オーナー様のこの想いに応えるため、ドムスデザインは土地選びの段階からプロジェクトに参画しました。

ドムスデザインのアプローチ ― 図面を引く前にやったこと

ドムスデザインでは、設計図面を引き始める前に徹底的な調査と対話を行います。
このプロジェクトでは、好立地を確保した後も、すぐに設計には入りませんでした。「女性が賃貸において本当に必要とするものは何か」を知ることから始めました。

土地選定からの参画

世田谷区千歳船橋、駅徒歩7分の好立地。イメージの良いエリアで人気が出ることは確実でしたが、ドムスデザインは「場所の力」に頼らないマンションづくりを目指しました。立地の優位性に甘えず、建物そのものが選ばれる理由になるプロジェクトを構想しました。

女性20人の座談会

設計前に一般女性20人を集めた座談会を開催し、間取り、設備、収納、動線などあらゆるテーマについて本音を聴き取りました。

その結果浮かび上がった、女性が住まいに求めるものの本質は、カタログのスペック表には載らない感覚的な豊かさだったのです。

女性だけの設計チーム

ドムスデザインはオール女性スタッフで構成されています。座談会で得た知見を、女性自身の感性で設計に落とし込める体制。「女性向け」を男性目線で企画するのではなく、女性が女性のためにデザインする 。 この一貫性が、プロジェクトの説得力を生みました。

ドムスデザインでは、設計の前に「市場の本音」「感性の核心」「チームの一貫性」を徹底的に突き詰めます。
イタリアで学んだデザイン哲学 「いきなり線を引かない」 を実践し、本当に求められている価値を設計に落とし込みます。

コンセプト 「女性が元気になるマンション」

座談会から導き出された答えはシンプルでした。五感が心地よければ、人は元気になれる。毎日帰ってくる場所が五感を満たしてくれたら、明日への活力が自然と湧いてくる。

「機能で選ぶマンションではなく、五感で選ぶマンション。帰るたびに、元気になれる場所」

大手デベロッパーが「女性向け=機能充実」と定義していた時代に、ドムスデザインは「女性向け=五感の心地よさ」という全く異なる切り口を提示しました。IHキッチンや収納の多さではなく、水音、光、風、香り、素材の手触り、人間の根源的な感覚に訴えかけるデザインで差別化しています。

デザインの特徴

1. 賃貸に見えないプチホテルのような外観

道路から見たとき、「これはプチホテル?レストラン?」と思わせる外観デザイン。一見して賃貸マンションとわからないことを重視しました。自転車置き場もあえて見せず、そこに部屋があるかのように隠す設計。「帰ってくる場所」が誇らしい存在であることが、暮らしの満足度を根本から変えます。

2. 五感を呼び覚ます10mの吹き抜け空間

エントランスはトンネルのように一度閉じ、オートロックを抜けると10メートルの吹き抜け空間が現れます。水音、差し込む光、そよぐ風、オリーブやミカンの香り、毎日の帰宅が五感のリセットになる仕掛けです。吹き抜けは階段室も兼ね、面格子が太陽の光で美しい影模様を落とします。

3. 入居者だけの特別な場所「屋上庭園」

屋上には入居者が自由にハーブを植えられる庭園を設置。椅子とテーブルが置かれ、ゆったりと流れる時間の中でリラックスできる空間です。毎週土曜日には入居者が自然と集まり、ワインを持ち寄って語らう場にもなっています。強制も義務もない、自由なコミュニケーションが自然と生まれる場所です。

4. すべての部屋に「元気になる要素」を

全室塗り壁をモチーフにした仕上げ。キッチン、パウダールーム、浴室、居室のすべてに、五感の心地よさを意識したデザインを施しています。ワンルーム7戸とメゾネット3戸という構成で、暮らし方の選択肢も提供。猫の飼育も可能にし、女性の癒しのニーズにも応えています。

結果・成果

オープンから2年間、退去者ゼロ。

通常、入れ替わりの多い春の引越しシーズンにも、ひとりの退去者も出なかったのは、賃貸経営においてほぼ奇跡と言える成果です。

退去率オープン後2年間ゼロ
入居者の定着小田原への異動後も退去せず、車通勤を選択した入居者あり
コミュニティ形成毎週土曜の屋上ワイン会が自然発生
入居者の質似た価値観を持つ入居者が自然と集まる好循環

世田谷区から小田原に異動になった女性医師は、このマンションを離れるのではなく、通勤のために車を購入しました。また、ワンルームで暮らしていた女性は結婚後もパートナーと共にそのまま住み続けています。「部屋」ではなく「暮らし」に対する愛着が、通常の賃貸では考えられない入居者の定着を生みました。

オーナー自身もこのマンションに住み、月曜の朝にロビーでコーヒーサービスを行ったり、近所のおすすめ店の情報を掲示板で共有したり。空間デザインが人と人をつなぎ、まるで全員が家族のような、ほどよい距離感で繋がる大人のコミュニティが実現しています。

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