はい、変わります。 しかも、あなたが思っている以上に、深いところから。
トイレは院内でもっとも見落とされがちな空間です。
しかし私たちは30年以上の医療施設デザインを通じて、確信していることがあります。
「使えればいい」と思われているトイレこそ、クリニック全体の空気をつくっている、と。

病院のトイレには4つの役割がある
クリニックや病院のトイレを考えるとき、私たちはまず「この空間が何のためにあるか」を整理します。トイレには大きく分けて4つの役割があります。
①排泄の場
術後や安静を強いられている患者さんにとって、ベッドの上でなくトイレで排泄できることは、回復への大きな喜びです。だからこそ、「行きたい」と思える空間であることが治療の一部になります。
②観察の場
排泄物の色で体調を自己チェックできることは、早期発見にもつながります。よく「便器の色は何色がいいですか?」と聞かれますが、迷わず「白」が正解です。黒やワインカラーでは排泄物の色がまったく確認できません。
③リハビリの場
術後などの早期離床において、トイレまで歩くことは立派なリハビリです。「汚い」「寒い」トイレだと行くのを先延ばしにしてしまい、回復の妨げになります。「行こう」と自発的に思うことが、脳にシグナルを送り回復を促すきっかけになるのです。
④気分転換(自己解放)の場
トイレは短時間で気持ちを整理し、気分を転換できる場所です。待合室でふと立ち寄ったトイレが清潔でアートやオブジェがあったとしたら、少しイライラしていた気持ちが穏やかになるかもしれません。入院患者さんが病室の白い天井ばかり見つめている折、トイレの壁紙の優しい色彩が闘病を頑張る気持ちにさせてくれることもあります。
患者さんはトイレで、クリニックへの信頼を決めている
TOTO(株)が2022年に実施した病棟トイレのニーズ調査では、患者さんが求める機能のトップ5として「便座除菌クリーナー」「手で触れずに開閉できる出入口ドア」「センサーで流れる便器」などが挙げられています。感染防止の観点から非接触化は今後も進み、医療施設ではあたり前になっていくでしょう。
しかし、機能だけを追い求めると空間が無機質になりがちです。電気基盤を介したデバイスが増えるほど、素材はアルミやステンレスなどのメタル系が多くなり、冷たく感じられる空間になってしまいます。進化した機能を備えながら、温かみのある空間をつくることが、これからのトイレデザインの核心です。
「人は美しいと感じているとき、痛みが和らぐ」。これは医療現場における空間デザインの本質を突いた言葉です。美しく、行きたくなるトイレは、患者さんの「このクリニックは細部まで丁寧だ」という信頼感を生み、口コミや紹介患者の増加というかたちで経営にも返ってきます。

デザインが変えた、クリニックの空気
なのはな眼科
自由診療も見据えた優雅な気分になれるペデスタル型洗面台を採用。手洗い脇にはバッグを置く台を設け、患者さんからトイレに必ず立ち寄りたいと好評を得ています。

ほうせんか病院
「仮面舞踏会」をコンセプトに、外来トイレを赤と黒をベースにデザイン。高齢者で寝たきりの方も多い病院だからこそ、お見舞いに来る家族やお孫さんが楽しめる空間にという配慮から生まれました。

鈴木慶やすらぎクリニック
病院のトイレというと冷たいタイルでクリーム色のイメージですが、ここでは、黒やゴールドを使い、エレガントに演出しています。
トイレという日常動作もリハビリのひとつと捉えているため、そのトイレが貧弱であってはいけないという思いからの意匠性です。

ひかりクリニック
採尿カップを入れるBOXをまるで小さな家のような形にデザイン。子供の患者さんが多いため、「少しでも楽しみながら検査できるように」という思いから、来院を嫌がるお子さんも喜んで来てくれるようになりました。

スタッフが辞めない職場は、トイレが美しい
「人材が集まらない」「意識の高いスタッフが育たない」「入れ替わりが早い」
多くのクリニック経営者から聞く共通の悩みです。
研修を重ねても、なかなか人は変わらない。でも、環境を変えると人は変わります。
汚いトイレは、スタッフのやる気を静かに、しかし確実に削いでいきます。逆に美しく清潔なトイレは、わずかな休憩時間でも気持ちをリセットできるリフレッシュの場になります。「大切にされている」という実感がスタッフの患者さんへの接し方を変え、その空気が待合室にまで伝わっていきます。

細部にこそ、クリニックの「人格」が宿る
トイレブース内に荷物を置く台やフックがあるかどうか、便座シートや便座クリーナーの位置が使いやすいか。こうした細部への配慮も、患者さんの満足度を左右します。ナースコールや手習いの邪魔にならない位置への設置、高すぎず探しやすいフックの高さ。せっかく取り付けても使いにくければ逆効果です。患者さんの立場でトイレを実際に使ってみてチェックすることが大切です。
行きたくなるトイレとは、患者さんの回復を応援するもの。病院のメッセージそのものです。
まずはご相談ください
ドムスデザインでは、トイレひとつをデザインするときも、「その空間に入った人が何を感じ、どんな気持ちで出てくるか」を起点に考えます。
視覚(色・素材・照明)だけでなく、嗅覚(香り)、聴覚(音の遮断や音楽)、触覚(素材の手触り)まで、五感すべてに働きかける設計が、人の心を本当の意味で動かします。
「大規模な改修は考えていない」「どこから手をつければいいかわからない」という段階でも構いません。まずはお気軽にご相談ください。

